春の雪(『豊饒の海』第1巻)三島由紀夫

しなやかすぎるやわらかさと頑丈すぎるかたさ という相反する概念
でもどちらももろくて壊れやすい
「男らしさ」と「女らしさ」は実はものすごく曖昧であやふやな表現で
それぞれがそれぞれの性別にそのまま当てはまるとは限らない
白痴 坂口安吾

坂口安吾という人の生のにおいをちょっと嗅いだような気分
わたしは 形はどうであれ この人は生きているというリアリティをまざまざと突きつけてくる表現にひかれる
きれいごとを並べるだけなら機械だってできるし

この作品をもとにした映画も観たけれど わたしにはちょっと期待はずれだった
原作に忠実であれとは言わないけれど なにか肝心なものが抜けているような気がして
しかもそれを上からむりに貼っつけたような 良くない意味でのチープさが興ざめで
わたしにとっては この話に触れるのは この小説だけでよかった
不道徳教育講座 三島由紀夫

うらのうらは結局おもて
だけどひっくり返したあとにちゃんとまたおもてに戻せる ということは
一見単純作業なようでじつは至難の技

ずば抜けた観察眼と考察力がしっかり基盤になっているのは小説と同じだけど
このエッセイでその上にまぶしてあるのはユーモアと毒

時代背景が違ういまでもじゅうぶん通じるものがほとんどだった
不思議図書館 寺山修司

生きた図書館テラヤマシュウジ
どれだけ知識があるか ではなくて
底なしの欲をもっていること
それこそが魅力ある人の真髄であるとあらためて感じずにはいられなかった
寺山修司という人が溢れてやまない欲の泉だったことはまちがいない
痴人の愛 谷崎潤一郎

「じわじわ」の恐怖
主人公譲治がじょじょに狂っていくさまはこのうえなく気味が悪いのにまた読み返したくなってしまう
そのきもちわるさがこの本を好きな理由でもあるのだけれど
一般的には ナオミが悪魔的だと言われているけれど
この物語自体が悪魔の魅力を醸し出しているように思えてならない
変態好みのつぼにばっちりはまるので いままで出会った本の中でもとくに気に入っている本

これも映画化されているみたいだけれど
パッケージを見て「だいじなのはそこじゃないだろう!」と思ったので
観る気は失せた
憂国 三島由紀夫

切腹のシーンのリアルな描写よりも
手入れの行き届いた愛情のつつましさのほうが痛々しく
ハラキリのための刀は紙面を貫いて 胸の奥深くに突き刺さった
この話の中の自殺にまったく無責任さを感じないのは
物語が理想ばかりで理想的にくみ立てられているから
という理由だけではないような気がする
ドグラ・マグラ 夢野久作

文章でぞっとさせるすごい作品
コンナ説得力のあるつくりばなしが半世紀も前からあったなんてとただおどろくばかり
この世はとにかくなぞだらけなので…
みんないったいどこからきてどこへむかっていくのだろう…